あたまのなかで

よろしくお願いします。神経症患者としてではなく、ひとりの人間として。俳句が好きです。Twitter→(https://twitter.com/ryuji_haiku)

診察記録 2018年11月 

 

こんばんは。

 

またまた先月のことになってしまいますが、11月28日(水)に、埼玉医科大学病院まで診察に行ってきました。

 

ただ、今日はその診察記録の前に、最近自分の身に起こった変化について書こうと思います。

 

あまりブログを更新出来ていないので書きそびれてしまったのですが、実は11月の中旬くらいに仕事のことでものすごく落ち込むことがありました。

 

いまは落ち着きましたが、正直に言えばその時は「仕事を辞めてしまおうかな」と考えたほどです。また、希死念慮、自殺願望のようなものも抱きました。

 

具体的には、私のいないところで、上司のひと(Oさん)と同僚のひと(Hさん)が私について話しているところに遭遇してしまったということです。

さらに言えば、その会話のなかでのHさんの「木村さんは、最近変に要領が良くなっている」という一言にものすごく傷付き、人間性まで否定されたように感じたということです。

 

このことについて、私はOさんに話しました。すると、Oさんは「Hさんの言葉は木村さんの仕事のやり方に対するもので、人間性を否定するようなものではない」と仰いました。

 

また、「これからもそういう仕事のやり方について指示したり、或いは注意することもあるだろうけど、決して人間性を否定するものではない」とも仰ってくれました。

 

それから、Oさんとの話のなかで自分が神経症を患っていることを改めて話しました。(面接のときにも話したのですが、きちんと伝わっているか不安だったので)

 

すると、Oさんは「おおよそは把握しているけど、具体的にどんな病気かは分からない」と仰いました。

 

そこで私は、「自分の感情とは無関係に気分が沈んでしまうといった症状があります。薬を服んでいるのである程度は抑えられますが、それでもそういう症状があることは知っておいてほしいです。」と説明しました。

 

それを受けて、Oさんは「分かった。これからは心配しなくて大丈夫だよ。」と仰ってくれました。

 

その後2、3日はOさんから改めて「心配しなくても良いからね。」と仰ってもらえたり、OさんがHさんをはじめとする同僚の方に私の神経症のことを話してくれたのかも知れませんが、周りの同僚の方も以前より穏やかに接してくれるようになりました。

 

今回のように、他人の言葉を必要以上にネガティブに受け取ってしまうという症状は神経症の典型的な症状のひとつだと思います。

 

その症状が出たことは、とても苦しい思いもしましたが、Oさんと話し合う機会が持てたし、Oさんや同僚の方からの接し方の変化にもつながったので結果的には良かったと思います。

 

今回は思いがけず自分の病気について話すことになったものの、自分の病気について話すこと、またそれを周りのひとに理解してもらうことの重要性は改めて感じました。

 

・・・前置きが長くなってしまいましたが、先日の診察ではこのことをまず先生に話しました。先生からは「そういう風に自分の病気の苦しさを知ってもらうように周りに働きかけるのはとても良いことだと思う」と仰ってもらえました。

 

ただ、私のなかには良かったと思う反面、「また、他人の言葉を必要以上にネガティブに受け取ってしまうことが起こったらどうしよう?」という思いもありました。

そのことを先生に相談すると、「まず一旦気分が落ち着くまで待つことが大切です。例えば一晩寝てみるとか。そして、もしそれでも苦しい状態、死にたいと思うような状態が続いたら、病院を頼ってください。手紙でも、電話でも、どんな方法でもいいので、木村さんからのSOSを待っています。」と仰ってもらえました。

 

私は先生からのこの言葉を聞いて、非常に嬉しく思いました。いつ神経症が重くなるか分からない身として、非常にありがたかったです。

 

今回の気分の落ち込みは、10月末の診察で、処方せんから頓服薬を無くしたことも関係あると思います。正直、いままで頓服薬はたまに服む程度で、あまり重要視していなかったのですが、実際に無くされるとこんなに違うものなのかと驚きました。先日の診察では、やっぱり頓服薬を処方してもらうことになりました。

 

というわけで、神経症の精神的な落ち込みは、いまのところはだいぶ良くなっています。

 

しかし、体調的な落ち込みは少し悪くなっています。

具体的には頭痛です。最近とても寒い日が続くせいか、頭痛に悩まされています。

 

その痛みですが、いままで神経症の症状として感じていた頭痛の鈍い痛みから、例えて言えば風邪を引いたときに感じるような鋭い痛み、なにかで刺されたような痛みに変わっています。抗不安剤を服んでも治まりませんでした。

 

先生にそのことを相談すると、頭痛薬としてロキソニンジェネリック医薬品を処方してもらいました。また、ロキソニンはひとによっては胃が荒れることもあるそうなので、予防薬として胃薬も処方してもらいました。

 

診察に行った日のあともそうした頭痛が起こったのですが、ロキソニンを服むと痛みが治まりました。

 

頭痛以外の体調的な落ち込みは、いまのところありません。

 

こんなふうに、神経症と向き合いながらも出来るだけ仕事を長く続けていきたいです。

 

現在の薬の状況です。

 

抗不安剤 ロラゼパム錠「サワイ」 0.5mg 1日4回
睡眠導入剤 ブロチゾラム錠「サワイ」 0.25mg 1日2回(就寝前)

抗不安剤 レキソタン錠5 5mg 不安時

・頭痛薬 ロキソプロフェンナトリウム錠 「クニヒロ」 60mg 頭痛時

・胃腸薬 レバミピド錠「EMEC」 100mg 頭痛時

 

次回の診察は、12月26日(水)の予定です。

 

 

 

「カードキャプターさくら展 魔法にかけられた美術館」に行ってきました!

 

こんばんは。

 

昨日は六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催されているカードキャプターさくら展 魔法にかけられた美術館」に行ってきました!

 

展覧会の公式サイト→(http://ccsakura-official.com/ccsakuraten/)

 

これまでこのブログでも何回か話していますが、私は「カードキャプターさくら」が大好きです。

 

そもそも、私が「カードキャプターさくら」を好きになったきっかけは、2016年7月から『カードキャプターさくら クリアカード編』の連載が始まり、また今年の1月にはNHK BSプレミアムでそのアニメも始まったことでした。

 

もちろん、それ以前から「カードキャプターさくら」という作品自体は漠然とですが知っていましたが、詳しいキャラクターやストーリーまでは知りませんでした。

 

そこで、そのアニメが始まったことを良いタイミングだと思い、1996年から2000年まで連載されていた『カードキャプターさくら』の原作の単行本を読み始めました。

 

絶句しました。まず、自分が想像していたより遥かに絵が上手でした。マンガの1ページごと、1コマごとの絵が非常に緻密に描かれていると思いました。

 

また、その絵と同じように、ストーリーも緻密なものであると知りました。例えば伏線に関して言えば、物語の終盤で重要な要素となる伏線が、既にその序盤に登場していたりして驚きました。

 

そして何よりもさくらちゃんの可愛さ!!!大げさではなく、今まで100回から200回は「可愛い」と口に出して言っていると思います。

さくらちゃんの素直なところ、たとえ困難な目に陥っても決してあきらめないところ、少し天然なところ、家族のみんな・友達のみんな、そしてケロちゃん、雪兎さん、小狼くんに優しいところ・・・。どれも本当に素敵です。

また、笑顔や、髪型、普段の服装・親友の知世ちゃんが作ってくれるバトルコスチュームもとても可愛いです。

 

このように「クリアカード編」のアニメを観ながら、また『カードキャプターさくら』の単行本を読みながら、私は段々とその世界観に惹かれていきました。クリアカード編」のアニメと合わせて、「カードキャプターさくら」のアニメの再放送が行われたことも嬉しかったです。

 

しかし今年の6月に「クリアカード編」のアニメが終了。まだ原作が連載中という理由からなんでしょうが、その最終回は正直言って消化不良なものでした。

 

クリアカード編」の原作が連載中であるということは分かっていますが、やはり毎週日曜日のアニメを楽しみにしていた身として、放送終了後は「さくらロス」になってしまいました。例えば、アニメの第2期の放送が始まるとか、そうした新しいことを待ち望んでいました(欲張りですが・・・汗)

 

そんな身に今回の展覧会の開催を知りました。「絶対観に行きたい」と思いました。そして昨日、期待値を最大限まで上げて観に行きました。これからその様子を書いていきます。

 

まず、会場は先に書いたように六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリー。森ビルの52階にある美術館です。エレベーターで一気に52階まで上がります。

 

展覧会の会場に着いてまず目に飛び込んできたのは、壁一面に貼られたポスター。かなり大きかったです。

 

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1 はじまりの書庫

 

最初の展示室は「はじまりの書庫」。クロウカードが入っていた本をはじめ、何冊もの本が巨大なかたちで部屋に置かれています。そして、それぞれの本の裏に「カードキャプターさくら」の作品紹介が書かれています。登場人物の相関図や、海外での人気について等です。

展覧会では写真撮影がOKな場所が多かったので、ここからは写真も合わせて展覧会の様子を書いていきます。(*^_^*)ノ

 

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巨大なクロウカードの本!

 

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たくさんの本が置かれています。

 

2 スペシャルシアター

 

「はじまりの書庫」の部屋は、スペシャルシアター」へと続いています。この部屋では今回の展覧会に合わせたスペシャルムービーが観られます。

 

スクリーンに見開きのクロウカードの本が映し出されます。すると、その本からケロちゃんがひょこっと顔を出します(可愛い!)

 

ケロちゃんからのお話は、まず展覧会に来てくれたお客さんへのお礼。ちなみに、そのなかでケロちゃん「こりゃ驚いた!今日のお客さん、みんなべっぴんさんと男前さんばかりやないか~!」と言っていました。つまり私はケロちゃんから男前だと認定してもらえたのです。イェイ。

 

そして、そのお礼に続くケロちゃんのお話なんですが・・・、これは実際に展覧会に行って聞いてほしいです。展覧会の序盤であるこのスペシャルムービーのなかでケロちゃんが話していたことが、展覧会の終盤、思わぬかたちで分かるようになっています。言ってみればここでのケロちゃんのお話は、この展覧会をひとつの物語に例えたときの伏線のようなものです。

 

3 花(フラワー)の部屋

 

次にあったのは「花(フラワー)の部屋」。さくらちゃんの本名は木之本桜といいますが、それにちなんでかカードキャプターさくら」には実に多くの花が登場します。この部屋では、そんな作中に登場する花々をCLAMP先生によるイラストで観ることが出来ます。ちなみに、さくらちゃんの家族の名前ですが、お母さんは撫子さん、お父さんは藤隆(ふじたか)さん、お兄ちゃんは桃矢(とうや)くんといいます。みんな綺麗な名前・・・。

 

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「花(フラワー)の部屋」の様子。壁に掛けられた花の絵はどれも小さいですが、それが却ってその繊細さに引き込まれます。

 

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もちろん、さくらの絵も展示してありました。

 

この部屋について特に言いたいのは、2枚の写真を見て分かるように、壁や床に描かれた花の絵の数々です。

実はこれらの花の絵、壁紙等であらかじめ貼られているものではなく、この展覧会に来たお客さんが1枚ずつ貼っていったシールなのです。部屋には5種類の花のシールが置いてあって、そのなかから好きなシールを1枚貼ることが出来ます。

展覧会が始まってからまだ約1ヶ月ですが、既にこんなにたくさんの花のシールが貼られている光景に、カードキャプターさくら」がいかにたくさんの人たちから愛されている作品かということを改めて感じました。

 

私もアジサイのシールを貼りました。これからもどんどんシールが増えていってほしいです(*^▽^*)

 

4 包囲(シージュ)された知世の部屋

 

次は「包囲(シージュ)された知世の部屋」。先に書いたように、さくらちゃんのバトルコスチュームは親友の知世ちゃんがすべて作ってくれています。この部屋では、そんな作中に登場するバトルコスチュームが再現されています。

 

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どのバトルコスチュームも、非常に細かいところまで再現されていて驚きました!

 

5 迷(メイズ)な原画ゾーン

 

ここは今回の展覧会で最も重要な展示かも知れません。「原画ゾーン」とあるように、『カードキャプターさくら』『カードキャプターさくら クリアカード編』のなかから、いままでの表紙絵・マンガの各話の扉絵・マンガの本編等の原画が飾ってあります。その数100枚以上!最初に写真をあげた展覧会のポスター(オリジナルイラストです)の原画もありました。

 

先に書いたように、CLAMP先生の絵は非常に緻密なんですが、こうして原画を観てそのことを再確認しました。どの絵も目眩がするくらい美しかったです。

 

例えば、単行本の表紙絵はカラーイラストになるわけですが、原画を観るとその1色1色が本当に細かく塗られているのが分かります。

また、マンガ本編はモノクロですが、登場人物の表情から、背景・スクリーントーン・擬音のロゴ・吹き出しのとなりに書かれた手書きのセリフに至るまで、一切の無駄を感じませんでした。線そのものは非常に細いんですが、見づらいところが全くなかったです。マンガの原画というより、表紙絵や扉絵のように1枚の絵を観ている感じがしました。

 

マンガが好きな人・マンガを描いている人はもちろん、マンガに限らず美術が好きな人・美術に興味がある人・美術制作を行っている人は観るべきだと思います。そのくらいCLAMP先生の絵は美しかったです。

 

また、カードキャプターさくら』で既に上手だった絵が、『クリアカード編』でさらに上手になっていることも印象的でした。CLAMP先生の商業誌でのデビューは1989年ですが、1990年代から2010年代に掛けて、常に時代が求める絵のようなものを考え、その考えを踏まえてご自身の絵をどんどん高められていると思います。

 

実は、広い展覧会の会場のなかで、この場所だけ写真撮影がNGになっています。なので、どの絵もしっかりと目に焼き付けました。

 

それにしても、本当に美しかった・・・。

 

6 記録(レコード)の部屋

 

この部屋は展示室というよりは撮影コーナーです。最初に写真をあげたポスターの絵をバックに、そして(恐らく)等身大のさくらちゃんのパネルと並んで写真を撮ることが出来ます。

 

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ちなみに、ポスターの絵と同じように、この等身大パネルの絵も展覧会のためのオリジナルです。

 

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可愛い・・・。

 

ここでの写真撮影は何となく気後れしちゃって行わなかったんですが、いま思い返せば撮っておくべきだったなぁと思います。

 

7 大(ビッグ)なケロちゃん

 

ここも撮影コーナー。ものすごい大きなケロちゃんが置かれ、そのケロちゃんと一緒に写真撮影が出来ます。それから、平日だけですが、先に紹介したバトルコスチュームの貸し出し(帽子とマント)も無料で行っていて、コスプレしながらの撮影も出来ます。(スタッフの方が撮ってくれます)

ここは・・・正直、先程の「記録(レコード)の部屋」より気後れしてしまいました。内容に不満があるわけではありませんが、コスプレの衣装がさくらちゃんのものしかなく、そのため撮影の列にも女性の方しかいませんでした。例えば、桃矢くんと雪兎さんが通っている星條高校の制服のブレザーとかがあったら撮影してもらったかも知れません。

 

8 カードの間

 

この展覧会のラストの展示です。カードキャプターさくら』『クリアカード編』に登場する魔法のカード「クロウカード」「さくらカード」「クリアカード」を一度に見ることが出来ます。

長方形のカードが壁一面に並んでいる様子は壮観でした。また、この部屋でスペシャルムービーでケロちゃんが話していたことの意味が分かるようになっています。

 

これで展示は終了。最後にミュージアムショップへ寄ります。この展覧会にちなんだ色んなグッズが所狭しと並んでいます。どれも本当に可愛くて、何を買おうか迷ったんですが、「全部欲しくなり、結局何も買えない」という倒錯した心境に陥り、何も買えませんでした。何か買えばよかったかな・・・。

 

そんな感じで展覧会の会場を後にしました。森ビルを出たときはだいたい5時くらいで、辺りはすっかり昏くなっていました。

 

展覧会全体の感想を言うと、カードキャプターさくら」の世界観が凝縮されていました。どの展示室も本当に可愛らしく、繊細でした。またどの展示もずっと観ていたいものばかりでした。先に「期待値を最大限まで上げて観に行きました。」と書きましたが、そんな期待値なんかとうに超えさせてくれました。

 

そして、実はこの展覧会は10月26日から11月30日までの前期と、12月1日から1月3日までの後記とで展示内容が変わります。具体的には「迷(メイズ)な原画ゾーン」の原画が総入れ替えされます。

つまり、私が昨日行ったのは前期の原画の展示なのです。前期の展示だけで名シーンが盛りだくさんだったのに、後期ではさらに他の名シーンの原画が展示されるわけです。

 

どんな絵が展示されるか、既にワクワクしています。なので、後期の展示も多分行くと思います。「記録(レコード)の部屋」で写真撮影が出来なかったことと、ミュージアムショップで何もグッズを買えなかったことの悔しさを晴らすためにも・・・。

 

というワケで、カードキャプターさくら展 魔法にかけられた美術館」に行ってきた感想でした。本当に良かったです。みんなも観に来てや~!

 

間村俊一さんの装幀展「ボヴァリー夫人の庭」に行ってきました!

 

こんにちは。

11月7日(水)に間村俊一さんの装幀展「ボヴァリー夫人の庭」に行ってきました。



私が初めて間村俊一さんのお名前を知ったのは攝津幸彦選集』という本の装幀でした。

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「ポセイドン」という題のご自身によるコラージュと、書名のロゴの銀と黒との色遣いに一発で「カッコいい!」と心惹かれました。

その後も、『安井浩司選句集』、『齋藤愼爾全句集』、塚本靑史『わが父塚本邦雄等、間村さんの装幀された本を手に取っては、その度に「カッコいいなぁ」と感じていました。

 

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いま名前をあげた本からなんとなく分かるかも知れませんが、間村さんは装幀家であると同時に俳句作家でもあります。ご自身も『鶴の鬱』『跋辨天(ぬけべんてん)』という2冊の句集を上梓されています。もちろん、ご自身の句集の装幀もご自身でされています。

 

そもそも、この装幀展は『彼方の本 間村俊一の仕事』という本の上梓を記念して開催されたものです。『彼方の本』は、これまで間村さんの手掛けた装幀の紹介、装幀にまつわるエッセイ、『跋辨天』以降の約100句・・・等が収録された盛り沢山な本です。

 

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また、詳しくは後述しますが、今回の装幀展では間村さんとゲストの方2名によるトークイベントもあったので、私にとっては憧れの装幀家・俳句作家の方と実際にお会い出来る機会でした。

 

装幀展の会場は根岸にある「そら塾」という古民家を改装したギャラリー。鶯谷駅の南口から歩いて5分のところにあります。

「そら塾」公式サイト→(
http://sorajyuku.ciao.jp/

少し話は変わりますが、実は私、先月iPhoneからauガラケーに機種変更しまして、インターネットとかGmailはすべてパソコンを使っています。(この記事もパソコンで書
いています)

そのため、前日に「そら塾」の公式サイトにある地図と、Yahoo!乗り換えとをプリントアウトしなければなりませんでした。

ガラケーに変えた理由は仕事では電話しか使わないからと、大した用もないのにスマホをいじってしまうことが時間的にも経済的にももったいないと感じたからです。

ただ、方向音痴な私にとって「外出先で地図が調べられない」ということは不安ではありました・・・。そして、この日はそんな不安と初めて向き合う日でした・・・。(少し大袈裟)

ただ、結果として少し迷いましたが、無事に辿り着けたので良かったです(^^)v

話を戻します。実際に着いた「そら塾」の外観は、事前にネットで見た通り昭和らしい雰囲気がたっぷりと漂う古民家でした。

 

受付でトークイベントの参加費2000円を払います。ドリンク代込みの値段だったので、缶チューハイを選びました。

 

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そして、なかに入ると1階・2階ともにところ狭しと並べられた間村さんが装幀された本・本・本!カッコいい装幀の本が並んでいる様に圧倒されてしまいました。

 

ちなみに、古民家を改装してあるので入り口では靴を脱ぎます。また、二階は畳張りになっていて、「こんな部屋でゴロゴロ出来たら気持ちいいだろうなぁ」と思いました。(もちろんしませんでしたが)

 

展示を見てしばらくすると、先に書いたトークイベントが始まりました。

 

このイベントは「三つ巴バトルトークと称され、開催期間中に何回か行われました。日によってゲストが違ったのですが、私が行った日は間村さんの他、俳句作家の小澤實さん、俳句作家・詩人の高橋睦郎さんがゲストでした。

 

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少しぶれてしまっていますが、左から小澤さん、高橋さん、間村さん。

 

トークの内容は、まず『彼方の本』上梓までの様々な苦労について。本の構想が最初に予定していたものよりどんどん膨らんで、最終的に完成したのは出版記念パーティーの直前だったそうです。

 

次に、これまでのお仕事で知り合った方との交友関係について。間村さんの交友関係が高橋さんの交友関係と重なっている部分もあり、それぞれの思い出を話されていました。また、高橋さんの口から澁澤龍彦種村季弘といった私のなかでは「伝説」になっている人物の名前が自然に出ていたことに驚きました。他には、好きな画家の一人である美濃瓢吾(みの・ひょうご)の名前が出てきたことも嬉しかったです。

 

また、このトークイベントに合わせて小澤さんが『彼方の本』に収録されている句から33句を選び、資料として参加された方に配布されました。

 

そのなかから、私が特に印象的だった句を以下に引きます。トークのなかで間村さんはご自身の句を「妄想句」と仰っていて、また高橋さんも「間村さんの句は奇想句だよね」と仰っていましたが、小澤さんの選んだ句を拝読すると、「なるほど」と肯けました。

 

宮澤賢治全集

ジョバンニよ母待つ天の川の家

 

四谷シモン

しぐるゝやさしすせシモン左門町

 

光文社文庫版江戸川亂歩全集

明智くん、うまく化けたね猫じやらし

 

齋藤愼爾さん

蛍袋に亡父幽閉して五年

 

谷崎潤一郎と異国の言語

春深し卍に開く人の妻

 

また、トークイベントのあとは間村さんによる『彼方の本』のサイン会が行われました。間村さんはサインの他、ご自身の句の揮毫もされていました。

 

私がいただいたサインと揮毫はこちら。

 

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木村リュウジ様 名月やかなふ福助出かけて留守 俊一(ま) YAMANEKO-KEN

 

揮毫されるための句は何種類か用意していたようで、ある方は

 

ブエノスアイレスに初蝶見失ふ

 

と書いていただいていました。この句も良いなぁ。

 

そんな感じで、装幀展とトークイベントは楽しく幕を閉じました。

 

先に書いたように、この日のトークイベントには小澤實さんがゲストのお一人としていらっしゃっていました。そのため、会場には小澤さんが主宰を務められている俳句結社「澤」の方が多くいらっしゃいました。

 

というワケで、装幀展の終了後に急遽「澤」の皆さんにご飯へ連れていっていただくことになりました。

 

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ご飯をいただきながら、「澤」の皆さんと色んなお話をしました。

特に、私がいままで外側から感じていた「澤」や小澤さんについてのイメージと、実際に同人として内側から感じるイメージとの違いとを知れたことが良かったです。

また、私の所属する「海原」と「澤」とで結社は違っても、俳句に対する熱意は同じということを確認出来たことも嬉しかったです。

 

ちなみに、この日の翌日、ご飯の席でTwitterのアカウントを交換した方から、下北沢で行われている「澤」の句会への案内をGmailでいただきました。小澤さんに直接自分の俳句を見ていただける句会なので、なるべく早いうちに参加させていただきたいです。

 

というワケで、間村さんの装幀の世界も堪能出来て、間村さん、高橋さん、小澤さんによる貴重なお話も聞けて、「澤」の皆さんとの新しい俳縁も生まれてといった、大満足の展覧会でした。本当に行って良かったです!(*^▽^*)

 

診察記録 2018年10月②

こんばんは。

 

もう先月の話になってしまいましたが、10月31日(水)に埼玉医科大学病院に診察に行ってきました。

 

まず今回報告したいのは、薬の量について。

 

前回の診察記録(

https://ryjkmr1.hatenablog.com/entry/2018/10/10/110315)で、先生が「睡眠導入剤の量を2錠から1錠に減らしても良い」と仰ってくれました。

 

しかし、実際はいまに至るまで、2錠服まないと眠れない日が続いています。

 

そのことを先生に話し、これからも睡眠導入剤の量は2錠で処方してもらうことになりました。

 

ただ、その代わり(?)として、頓服薬の処方を失くしてもらえました!(*^▽^*)

 

今年の5月からロラゼパム錠「サワイ」0.5mgを、7月からは「サワイ」に加えて「レキソタン錠」5mgの計2種類の抗不安剤を、いままで頓服薬として服んでいました。

 

しかし、最近は気分の落ち込みも少なく、実際に前回の診察から今回の診察まで、頓服薬をまったく服まずにいられたので、思い切って処方を失くしてもらうことにしました。

 

まだ抗不安剤そのものは1日4回服んでいますが、それでも今回の減薬は寛解に近づいた気がして嬉しいです。

 

心の病は変動が激しいので、正直この状態がいつまで続くかは分かりません。でも、出来るだけ長く続けたいです。

 

次に、今回の減薬が出来た大きな理由としては、これも前回の診察記録で書きましたが、いまの仕事が問題なく続けていられるからだと思います。

 

たまに仕事相手からの心無い一言があったり(たぶん向こう側には、そこまでの悪気は無いでしょうが)、覚えるのが難しい仕事もありますが、それでも続けられています。

 

ちなみに、前回の診察記録で

 

「以前就いていた運送会社の事務の仕事は、始めてから約1ヶ月で人間関係で神経をすり減らした末に仕事に行けなくなり、無断欠勤を何日か続けた結果退職してしまったので、『1ヶ月目立った問題がなく続けられた』ということは自分のなかで1つの達成感がある」

 

といったことを書きましたが、一昨日で入社してから2ヶ月を迎えました。このまま3ヶ月、4ヶ月と働き続けることが出来たら良いと思います。

 

最後に、これも前回の診察記録で触れた障害者手帳と障害者年金について。

 

前回の診察で自分のなかの疑問点は解消されました。

 

しかし、申請に約1万円掛かることや、いま私が利用している自立支援医療制度よりも認定されるのが難しい(つまり、認定されないと約1万円が無駄になってしまう)ことを考えて、まだ迷っています。

 

まぁ、急ぐ問題ではないので、もう少し考えて結論を出そうと思います。

 

とりあえずいまは、減薬を喜びたいです(^_^)

 

現在の薬の状況です。

抗不安剤 ロラゼパム錠「サワイ」 0.5mg 1日4回
睡眠導入剤 ブロチゾラム錠「サワイ」 0.25mg 1日2回(就寝前)

 

次回の診察は11月28日(水)を予定しています。

 

 

 

ブログの更新ペースが遅くなります

 

こんにちは。

 

いつもこのブログを読んでいただきありがとうございます。

 

先ほど更新した「中山うりさんのライブに行ってきました!②」で、今月に書きたいことはほとんど書き終わりました。

 

先ほど更新した記事→(https://ryjkmr1.hatenablog.com/entry/2018/10/25/143330

 

それで、11月からはブログの更新ペースが少し遅くなると思います。

 

理由は色々あって、一言では説明出来ません。

 

ただ、深刻な理由ではないので心配しないでください。

 

毎月の診察記録も更新していきます。

 

あいまいな書き方しか出来ずにごめんなさい。そして、これからもよろしくお願いします。

 

中山うりさんのライブに行ってきました!②

 

こんにちは。

 

昨日は、中山うりさんのライブに行ってきました。セットリストと合わせてその様子を書いていきます。

 

うりさんのライブに行くのは今年の8月に続いて2回目です。

 

ちなみに、初めてライブに行ったときの感想はこちらの記事に書いてあるので、よければお読みください m(_ _)m→

https://ryjkmr1.hatenablog.com/entry/2018/08/11/230746

 

昨日のライブ会場は、代官山にあるカフェ・レストラン「WEEKEND GARAGE TOKYO」。私は恵比寿駅で降りてお店まで行きました。

 

「WEEKEND GARAGE TOKYO」公式サイト→(http://weekendgaragetokyo.jp/

 

お店の外観はこんな感じ。

 

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とてもオシャレな雰囲気です。

 

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ブラックボードにライブの案内が書いてありました。

 

ライブは開場18時半、開演19時半でした。お店に着いたのは18時15分くらいだったと思います。

 

お店の中も外観と同じように、オシャレな雰囲気でした。テーブルは長方形のものと円形のものがあって、どちらもゆったりとした椅子が囲んでいます。(長方形のテーブルにあったのはソファーだったかな?)

 

また、壁はコンクリートの打ちっぱなしで、自転車が飾られていました。レコードとかが並べてある棚もあったと思います。

 

昨日のライブはワンドリンク・ワンフードを注文することになっていたので、財布と相談した結果、フレンチフライドポテト(アンチョビソースかけ)とキリン一番搾りを注文。どちらもお店で一番安いメニューです(笑)

 

 

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正直、これだけじゃ足りないかなと思っていましたが、実際にフライドポテトを食べてみると満腹感がありました。アンチョビソースはニンニクの味がして美味しかったです。

 

だいたいフライドポテトを食べ終わり、ビールも呑み終わった頃にライブが始まりました。ちょうど良いタイミングでした。

 

ちなみに今回の席もテーブルをひとつくらい挟んで、うりさんの近くでした。

 

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真ん中のマイクがうりさんの歌うマイク。

 

そして、これが昨日のライブのセットリストです。(ツアーライブかどうか分からないので、同じ選曲ではやらないのかも知れませんが、一応ネタバレ注意

 

第一部

1.よいよいまほろ

2.寝ても覚めても

3.茶をすする

4.時々ドキドキ

5.青春おじいさん

6.プーアールママ

7.大佐

8.夢ノイリグチ

 

第二部
9.カゲロウガール

10.メロンソーダさくらん

11.風邪薬

12.石鹸水

13.ラムネの午後

14.月とラクダの夢を見た

15.南国タクシー

16.マドロス横丁

17.回転木馬に僕と猫

 

アンコール
18.窓際のトランペット

19.僕じゃない

 

特に印象的だった曲を順番に挙げていきます。

 

第一部

 

・茶をすする

 

8月のライブで初めて演奏してくれた曲。その時には「私にとっては珍しく和風なイメージで作った曲です」と話されていました。でも昨日のライブでは「私も30歳を過ぎてようやくコーヒーが飲めるようになったんですけど・・・」とコーヒーの話から歌に入っていました。

 

30歳を過ぎてコーヒーを飲めるようになったというお話にはビックリしました。ちなみに、それまでは「黒くて苦い汁」だと思っていたそうです。汁、って(笑)

 

曲としては、ゆったりとしたテンポの曲。日常のなんでもないことから世界観が広がっていく、最近のうりさんが多く作っている感じの曲です。

 

・時々ドキドキ

 

軽やかな感じの曲。YouTube中山うりさんの公式チャンネルがあるのですが、そこにあげられているこの曲のPVがとても素敵です。うりさんのちょっと怪しい感じが可愛いです(笑)

 

「時々ドキドキ」PV→(https://youtu.be/CMf0sCsutE8

 

・青春おじいさん

 

オリエンタルな曲調の曲です。ライブでこの曲が始まったときの迫力はスゴいです。すべての音が一気に「ジャーン!」と鳴ります。こちらも公式チャンネルにPVがあるので、観てほしいです。土屋萌児氏による凝ったアニメーションのPVです。

 

「青春おじいさん」PV→(https://youtu.be/GojxmMi2TvI

 

・プーアールママ

 

最新アルバムカルデラに収録されている曲。8月のライブで詳しい感想を書いたので今回は省きますが、やっぱり歌詞のなかで中華料理の名前が次々と出てくる部分は聴いていて楽しいですね。

 

第二部

 

・メロンソーダさくらん

 

カルデラ」収録曲。8月のライブで初めて聴いて「この人はスゴい!」と一発で心を持っていかれた曲。自分が知っているうりさんの曲のなかで、トップレベルに好きな曲です。自分にとっての夏のテーマソングとも言えます。

 

・風邪薬

 

「茶をすする」と同じく、8月のライブで初めて演奏してくれた曲。「メロンソーダさくらんぼ」の次くらいに好きな曲です。

 

「風邪ひいて 横になって

ロクでもないこと考える」

 

という歌い出しから、風邪を引いているときのボンヤリとした気分のような空想が広がっていきます。

 

「許せないと 悲しくなる

オリオン座を ぬけていく

宇宙飛行士の夢を見る」

 

ここの歌詞とか、最高です。

 

それから、曲の合間合間に入る

 

「♪あ〜ぁ 気持ちが良いもんだ」

 

という伸びやかな、それでいて気が抜けた感じのサビもとても良いです。

 

まだ音源化はされていないんですが、次のアルバムくらいに「茶をすする」と一緒に収録されると思います。もし収録されたら買います。いや、収録されていなくてもうりさんのニューアルバムというだけで買います(笑)

 

・南国タクシー

 

カルデラ」収録曲。インストゥルメンタルの曲なんですが、ライブで聴くとうりさんをはじめとするバンドメンバーの演奏力の高さに圧倒されます。結構速い曲なんですが、手元が狂わずに演奏しているのを観ると改めて「プロだなぁ」と思います。特に、ピアノの小林創さんの演奏は、ちょっと絶句するくらいスゴかったです。敢えて言葉を選ばずに言えば、化け物じみていました。

 

回転木馬に僕と猫

 

そもそも私がうりさんのことを知ったのは、NHKの「みんなのうた」でこの曲が流れていたからです。この曲の幻想的であり、切なくもある世界観に惹かれました。多分うりさんの曲のなかで一番多く聴いていると思います。

だから、この曲をライブで聴けたのはとても感慨深かったです。

うりさんの代表曲と言えるでしょうから、会場全体が一体となって聴いている感じが特に伝わってきました。

 

ここでライブは終了。しかし、アンコールの拍手は鳴り止みません。しばらくしてうりさんとバンドメンバーが再登場。会場はさらに大きな拍手に包まれました。

 

・窓際のトランペット

 

これもまだ音源化はされていません。夏の甲子園で野球部を応援する吹奏楽部のことを表現した曲。うりさんも実際に学生時代は吹奏楽部に所属していて「甲子園の決勝ではないけれど、その予選大会で演奏したことがある」といったことを話されていました。

この曲の魅力としては明るいメロディとか色々あるんですが、最大の魅力は終盤のうりさんによるトランペットソロです。それまで歌詞から想像していた甲子園での吹奏楽部の演奏が実際に聴こえてくるような、高らかなトランペットの音色に圧倒されました。

 

・・・というワケで、アンコールを含めて全19曲、約2時間でライブは終わりました。8月と同様、今回も大満足のライブでした。

 

やっぱり好きなミュージシャンのライブって良いなと思います。元気をもらえますからね。

 

また機会があったら聴きにいこうと思います!(#⌒▽⌒#)

 

ちなみに・・・。これはライブからの帰り際、お店でもらったフリスク「ストロベリーミント味」。どんな味か名前からは想像が出来ませんでしたが、実際に噛んでみるといちごの甘さとミントのさわやかさとが合わさって美味しかったです。

 

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「LOTUS」の句会に行ってきました!

 

こんばんは。

 

昨日は俳句同人誌「LOTUS」の句会に参加させていただきました。案の定長くなるので、目次付きでお読みください。

 

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『LOTUS』第39号(最新号)。特集は「古田嘉彦句集『展翅板』評」と「無時空映作品評」。

 

目次

 

1.句会に参加させていただいた理由

 

2.句会までの流れ

 

3.句会当日の様子

 

4.懇親会

 

1.句会に参加させていただいた理由

 

私が「LOTUS」の句会に参加させていただきたいと思った大きな理由は、同人である九堂夜想(くどう・やそう)さんと酒卷英一郞さんの作品に惹かれたからです。

 

まず、九堂さんの俳句を『LOTUS』第39号から何句か引いてみます。

 

我空とやみな蛇の香に酔いやすし

 

月餐やながるる琴のみな無弦

 

「我空」(がくう)とは仏教の言葉で、人間の体や心は因縁によって生成した仮のものであり、永久不変の我がそこにあるのではないという意味。

「月餐」とは、「げっさん」と読めば良いのでしょうか。こうした熟語は無く、九堂さんの造語だと思います。「餐」には飲食することや、ごちそうといった意味があるので、月の世界で開かれる宴のようなものを想像します。

 

・・・というふうに言葉の意味を解説していますが、九堂さんの句を鑑賞する上でこうした解説はあまり有効ではないと思います。

 

例えば1句目の「みな蛇の香に酔いやすし」とはどういうことでしょう。「蛇の香」という言葉からどのようなイメージを持つでしょう。毒?誘惑?欲望?

それから「酔いやすし」という言葉からは普段とは違った状態になることはイメージ出来ますが、さらに深めていけば人によってそのイメージは違ってくると思います。

欲望の権化になってしまったのか? 狂ってしまったのか? 死んでしまったのか?

そして、「みな蛇の香に酔いやすし」と書かれているということは、そうした欲望や誘惑から人は逃げられないということだろうか?

 

また、2句目の「琴のみな無弦」という表現からは、「琴の弦が無い」ということは通常に考えて音が出ませんが、「むげん」の音が「無限」を連想させて、むしろどのような音でも出せる琴を想像させます。

 

このように九堂さんの俳句は、現代的に解説された言葉の意味ではなく、古代から持つ言葉のイメージを鑑賞するものです。

私にとって九堂さんの句は、文字を読むより絵を観る(さらに言えば絵巻を観る)感覚に近いです。例えば、百鬼夜行絵巻の鬼神たちの姿から、彼らがどのような鬼神なのか想像する感覚です。

 

次に酒卷英一郞さんの俳句を同じく『LOTUS』第39号から引いてみます。

 

大片の

たびら雪なり

うつつなも

 

養花天

この花先の

鼻曇り

 

酒卷さんの俳句の特長としてまず挙げられるのは一行表記ではなく三行表記であること。三行で俳句が書かれることで、句のなかの言葉がより浮き立つという効果があると思います。

 

例えば、1句目の

 

大片の

たびら雪なり

うつつなも

 

ですが、「大片」とは大きく切り分けられたさま。「たびら雪」とは春になって、気温が上がってから降る雪です。

また、「うつつ」とは現実のこと。「〜なも」とは古語で、「〜てほしい」「〜てもらいたい」(願望)「〜ているだろう」(現在の推量)といった意味があります。

 

古語は不勉強なので確かなことは言えませんが、この句の場合「現実であってほしい」という意味になるでしょうか。

 

句の全体を訳すと

 

大きく切り分けられた

春の雪である

現実であってほしい

 

という意味になるでしょうか。

 

この句が三行表記であることで、春の雪が降っている空の広さや、その雪を見て「現実であってほしい」と思うほどに圧倒されている人物の姿(どこか広い場所に一人でいるような気がします)、そしてなにより春の雪の妖しさを含んだ美しさが、言葉が浮き立つと同時に伝わってきます。

 

また、2句目は掛け言葉的な要素が強い句です。「花先」は「鼻先」、「鼻曇り」は「花曇り」と一般的に書かれますが、この句では「はな」という二つの言葉を敢えて逆に表記しています。やはりここでも三行表記による言葉の浮き立ちが効果的です。

 

「養花天」とは桜が咲く頃の曇り空のことで、春の季語になっています。「花曇り」とも言います。

 

つまり、この句では養花天の下、自分のすぐ先に花があるのに、「鼻が曇っていて」その香りに気付かない人物の姿が書かれています。その姿が表記の入れ替えと合わさってユーモラスに感じられます。

 

九堂さんと酒卷さんの句は、作風が大きく違いますが、どちらも言葉によって句の世界感を作っていくという点では大きく共通していると思います。

 

私は、俳句の美しさや季語の美しさは日本語が長い時間をかけて作り上げてきたものだと考えています。しかし、その長い時間のなかでいつの間にか付け加えられた「俳句はこうあるべき」「季語はこうあるべき」という決まりに、若干の息苦しさを感じてもいました。

 

私にとって、九堂さんや酒卷さんは実際に俳句を書くことでそうした息苦しさを打破しているように見えました。

 

そうしたことから、実際に句会に参加して、お二人とお会いしてお話を聞いてみたい、またお二人以外の「LOTUS」の同人の方ともお会いしたいと思うようになりました。

 

2.句会までの流れ

 

「LOTUS」の句会までの流れは以下の通りです。

まず、当日の1ヶ月前までに句を投句します。その後、メールや郵便で今回の俳句一覧が送られます。

それをもとに自分が良いと思った句を3句選び、講評も書きます。また、それ以外でも気になったいくつかの句の講評を書きます。その選句と講評とを当日までに送り、句会に臨みます。

 

投句の締め切りが1週間前くらいの句会や、当日に投句する句会もあるので、それと比べると「LOTUS」の句会はかなり締め切りが早いです。

 

これは、「LOTUS」のブログに「『LOTUS』は句会および批評活動を通して〈詩〉としての俳句の可能性を追求する現代俳句グループです。」と書いてあることと関係していると思います。

例えば、先に書いたような九堂さんの句や酒卷さんの句を、当日いきなり見せられて解釈することは非常に難しいです。自分の分からない言葉を調べたり、その上でそれぞれの句に対する自分の解釈を作り上げたりする必要があります。投句の締め切りから句会当日までの1ヶ月という時間は、そうした解釈を深めるためにあるのだと思います。

 

また、選句だけではなく講評を書いて送るのはやはり解釈を深めるためという理由がありますが、その他に当日参加出来なかった方の評を代読することで句会のなかで共有するためという理由もあります。

 

この投句の締め切りの早さからは、そうした「LOTUS」のストイックさを感じました。

 

3.句会当日の様子

 

前置きがだいぶ長くなってしまいましたが、そうした思いで今回の句会に参加しました。

 

句会の会場は王子駅からすぐ近くの複合文化施設北とぴあ

 

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北とぴあ。大きいです。

 

北とぴあの8階にある会議室で句会は行われました。参加人数は私を含めて10人と少しでした。

ちなみに、会議室に入って驚いたのは、広い部屋のなかにまるで政治家が座るような大きい革張りのソファーが、楕円形の大きなテーブルを囲んで並べてあったこと。酒卷さんは「他の部屋は普通の会議室なんですが、何故かこの部屋だけこんなに立派なんですよ」と仰いました。

 

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立派だった801会議室の入り口。「LOTUSの会」と書かれてあります。

 

今回私が投句した句は次の3句です。

 

言語野の

端ばかり見て

秋の暮

 

はらからの

そのははからの

波羅蜜多

 

枯尾花

或る辭失くして

揺れ止まぬ

 

また、選句した句ですが、その作者の方の了解を取ったわけではないのでこのブログには載せられません。すみません。

 

少し見て分かるように、三行表記の俳句を書いてみました。言うまでもなく酒卷さんに憧れてのことです。

また、いま私が所属している「海原」では一行表記が前提なので、せっかくなら「海原」で出来ないことをやってみたかったという思いもありました。

 

私は、今回の句会は、初めて三行表記を書いてみて、それを酒卷さんをはじめとする同人の方に見てもらえば参加させていただいた意義があり、無点句でも仕方ないとも思っていました。

 

しかし、結果として

 

言語野の

端ばかり見て

秋の暮

 

の句が4点をいただき、最高得点タイになりました。

 

しかも、その選んでいただいた方のお一人には酒卷さんもいらっしゃいました。自分が憧れていた方から選をいただけたのです。

 

そして、「最高得点タイ」と書いていますが、この日の最高得点者のお一人にいらっしゃったのも酒卷さんでした。つまり、得点だけで言えば、酒卷さんの句に私の句が並んだことになります。(得点だけで言えば、ですよ)

 

このように、最高得点タイをいただき、酒卷さんにも選んでいただき、得点で酒卷さんに並ぶという、良いことづくめの句会でした。非常に驚きましたし、嬉しかったです。

 

全体的な句会の雰囲気を言えば、やはりストイックさを感じました。

「LOTUS」の句会には一行表記だけでなく、酒卷さんのような三行表記、また四行表記の句もあるので、三行或いは四行で書いた意図についても議論します。多くの結社や同人誌が一行表記を前提としているので、そのぶん議論の幅が広いと思いました。

 

このようにして、非常に有意義な句会を体験出来ました。

 

4.懇親会

 

句会が終わった後は、近くの居酒屋で懇親会がありました。

懇親会では、何人かの方から俳句を書き始めたきっかけや、好きな俳句作家について訊かれました。また、多行表記についてどう思っているのか、そうした多行表記のなかでもなぜ三行表記で俳句を書こうと思ったのかということも訊かれました。

 

逆に、私がお聞きした話で印象的だったのは九堂さんからのお話です。書くのが遅くなってしまいましたが、九堂さんは「海原」の前身である「海程」にかつて所属していました。そのため、私が日頃「海原」の句会でお世話になっている方についての色々なお話を「暴露」していただきました(笑)

 

また、九堂さんと酒卷さんとに揮毫を書いていただき、ツーショットを撮っていただけたことも嬉しかったです。私のお願いに対して、お二人とも快く引き受けてくださいました。ありがとうございました。

 

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『LOTUS』第39号の裏表紙に書いていただいた九堂さんの揮毫。

 

放く(さく)ころを天寂として蝶の道    夜想

 

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九堂さんとのツーショット。九堂さんはイケメンかつイケボな方でした。

 

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『LOTUS』第35号(酒卷さんの特集号)の裏表紙に書いていただいた酒卷さんの揮毫。

 

英桃

端から座五を

空けて待つ    英一郞

 

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酒卷さんとのツーショット。酒卷さんの句に使われている言葉は難しいものが多く、そこからなんとなく「ご本人も気難しい方だったらどうしよう」と思ってしまっていましたが、実際にお会いするととても気さくな方でした。

 

また、句集や俳誌もたくさんいただきました。重ねてありがとうございました。

 

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九堂さんからいただいた『海程多摩』第8集・第12集、『LOTUS』第39号。

 

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酒卷さんからいただいた安井浩司の評論集『海辺のアポリア』と、句集『空なる芭蕉』『宇宙開』『烏律律(うりつりつ)』。

 

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四行表記の俳句を書かれている上田玄さんからいただいた句集『暗夜口碑』

 

遺髪あり

漂う雲の

翳は

宿墨    上田玄

 

次回の句会は12月にあります。三行表記の俳句は実際に書いてみて思った以上に楽しかったので、次回も参加しようと思います。今回の句会で考えたことを活かした句を書きたいです。

 

長くなりましたが、以上、「LOTUS」の句会の参加記録でした。

 

では、また。

 

「LOTUS」のブログ。今回の句会報告が早くも載っています。他の方の句はこちらからご覧ください。→(http://blog.livedoor.jp/lotus_haiku/